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相続遺産の分割とは

遺産の分割





故人が死んだからといって相続人は個々の相続財産を自由に処分できるわけではありません。

そのためには遺産の分割という手続きが必要です。


遺産分割が終わるまでは、故人の遺産は”相続人全員の共有状態”におかれます。⇒民法898条




相続開始後、全相続人の共有状態にある相続財産を各相続人に個々に帰属させることを”遺産の分割”といいます。
つまり、誰が何をもらうか決めるということです。





●遺産の分割方法は、三つの方法があります。
①指定分割②協議分割③審判分割です。(図②)
 1)指定分割
  ・被相続人が遺言で妻には土地と家屋を、長男には株式を長女には預金をというように指定した場合及び第3者に指定の委託をした場合です。⇒908条
  ・指定の方法としては建物は妻に、宅地と農地は長男に、預金は長女というように具体的に指定してもよいし不動産は妻と長男に預金は長女にといったある程度抽象的な指定でもよいとされています。
 2)協議分割
  相続人全員一致の協議で分割するものです。次頁以後で詳しく述べます。
 3)審判分割
  指定もなく、協議も不調の場合に家庭裁判所の審判によるものです。詳細は後で述べます。

協議分割
分割について遺言による指定がないときは相続人全員の協議によって分割方法を決定します。協議が成立するためには相続人全員の意思が合致することが必要です。多数決では協議が成立しません。

●相続人全員による協議が必要
 一部の相続人を除いて協議したり、一部の相続人の意思を無視して強引に協議を成立させても協議は無効です。

●各相続人の自由な意思による協議が必要
 協議はあくまで各相続人の自由な意思によることが必要です。ですから一部の相続人をだましたり、おどしたりして無理に協議を成立させても後で詐欺・脅迫による意思表示として取り消されれば(96条)結局協議が無効となります。
 又、相続財産がほとんどないと思って極めて少額の財産取得の協議に応じたような場合には後で錯誤無効の主張(95条)をされて協議が無効となることもあります。

●相続人の中に制限能力者がいる場合
 ・未成年者→未成年者が法定代理人の同意を得て協議に加わるか又は法定代理人が協議に加わります。⇒4条・824条
 ・成年被後見人→後見人が協議に加わります。被後見人が協議に応じても後で取消すことができます。⇒9条・859条
 ・被保佐人→保佐人の同意を得て協議に加わります。⇒12条1項6号

●制限能力者とその保護者(法定代理人・後見人)が相続に関して利害が対立する場合(例 両者とも相続人である場合等)
 制限能力者の利益を犠牲にして保護者自身の利益を追求するおそれがありますので代理権が否定されています。この場合には家庭裁判所に特別代理人を選任してもらわなければなりません(826条・860条)

●協議による限りどのように分割するかは原則として自由ですが権利や義務の性質によっては特別の考慮を要するものがあります。以下にいくつかの例を挙げておきます。
 ●債権
  分割自体は自由ですが債権譲渡と同じく対抗要件(債務者に対する通知又は債務者の承諾⇒467条)が必要です。(図2)
 ●債権
  債務は債権者との関係では相続開始のときに法定相続分に応じて各相続人が負担します(図③)。分割協議の対象とはなりません。なぜなら、もし分割の対象になるとすると資力の少ない相続人に債務を指定するおそれがあり債権者に不利だからです。極端な場合には資力がない相続人に指定できるとすると債券の価値はゼロとなってしまうからです。
  但し、相続人間の内部関係のみの効力を生ずるような分割は有効です。たとえば不動産を取得することになったAがその代わりに債務を全額負担するという場合があります。この場合でも債権者には対抗できませんので債権者はこれを無視してBやCに250万円の支払請求ができます。BやCはこれを支払った後、内部関係の効力を主張してAに自分はいわばAの代わりに支払ったと主張してAに求償することができます。
  以上は債務が可分な場合ですが不可分な債務(たとえば土地・家屋を移転する債務)等の場合は全部の相続人に不可分債務として帰属します。つまり債権者はどの相続人に対しても全部の履行を請求できます。
 ●農地
  農地も土地という財産である以上、遺産分割の対象であることに変わりはありません。又、一般の農地の譲渡と違って相続による農地の移転、遺産分割による農地所有権の移転には知事の許可はいりません(農地法3条1項7号)ので、農業に従事していない相続人も農地を取得できます。
  ところが農業経営が相続によって零細化することは好ましくないとして農業基本法16条で「遺産の相続にあたっては従前の農業経営をなるべく共同相続人の一人が担当できるようにすべき」と定めています。
  この農業基本法の農地の分散化防止の思想と民法の均分相続の思想とを調和させるには農地を含む農業経営資産を農業後継者の単独所有とし後は他の財産を他の相続人に取得させるか農業後継者に他の相続人に対する債務を負担させるしかないと思われています。
  しかし実際には純農村地帯では他の相続人が相続放棄をしたり、903条の証明書を利用したりして、単独継承の手段としているようです。
  反対に都市郊外の農地では将来宅地化する可能性がありますので、他の相続人が現物分割の主張をすることも多いようです。

●遺産の分割方法
全員一致の協議によるのですから、どのように分割してもよいとも考えられますがここではいくつかのパターンを示しておきます。
 実際にはどれか一つというのではなく、いくつかを組み合わせたものが多いようです。

●現物分割
 宅地と住宅は配偶者Aに、工場は長男Bに、預金は長女Cというように現物で分割するものです。これが相続法における基本型ともいえますが、これだけでは公平な分配を達成することは困難でしょう。(図⑤)

●債務負担による方法
 農業経営資産の承継などのように、現物分割が困難な場合には後継者に遺産を一括して承継させ、その代わりに他の相続人に対して債務を負担させる方法も可能です。(図⑥)

●共有による方法
 農業や商業などの家業を共同で受け継ぐ場合には、その経営資産を共有とすることもできます。
 この場合の共有は、物権編の249条以下が適用される性質のものです。ですから以後相続編の規定の適用はなくなります。(図⑦)

●現物分割と用益権(賃貸権等)をセットにする方法
 農地等の場合で一応各相続人が農地を分割して取得します。その上で後継者以外の者が取得することになった農地には、後継者に用益権(賃借権)を取得させます。都市近郊の農地等では、この方法によれば比較的受け入れやすいとも考えられます。(図⑧)

●相続分を出資したことにして会社組織にする方法
 各自の相続分を出資したことにして、会社組織にして共同経営をしたり、一部の者が経営をして他の者が配当を受けるという方法による分割も可能です。(図⑨)

●分割の基準
 全員一致の協議によるのだから、どんな内容の協議であってもいいのではないかとの主張もあると思います。しかし、相続の根拠の所で述べましたような①被相続人の意思の尊重、②扶養、③潜在的持分の顕在化という3つを調和させる必要があります。そこで906条は遺産分割にあたっての基準を掲げています。(図⑩)
 分割の基準として、①遺産の性質(土地か建物か、住宅用に使用している土地かそれ以外か、居住用の建物か貸家か、不動産か動産か、現金か債権か等)②相続人側の事情(年齢、職業、心身の状態、生活状況等)③その他の事情を考慮して分割すべきとしています。
 但し、厳密に相続分にあたる財産評価額を割り当てなければ協議が無効となるわけではありません。それぞれの財産の価値は全相続人の評価が一致する限り主観的価値でもよいとされています。(この点が審判分割と異なるところです)。






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