法定相続人の範囲(法定相続の仕組み)
法定相続人
法定相続人と法定相続分
相続があった場合に、
その亡くなった人(被相続人といいます。)の財産や借金などの一切の権利(法律上は相続権といいます。)を誰が引き継ぐのか
誰がどれだけの財産をもらう権利があるのか
これらは民法で決められています。
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法で定められているので
故人(被相続人)の財産をもらう権利がある人を”法定相続人”といいます。
その法定相続人が確保できる遺産の割合を”法定相続分”といいます。
この章では、相続人の範囲と法定相続分について、親族図を使ってわかりやすく解説します。
(平成27年3月31日時点の法令に基づく取扱いです。)
まず知っておいてほしいのは、相続遺産をもらえる順番は民法上の相続順序により決まっているということです。
よって、その順序を理解すれば誰が相続人であるか判明することになります。
死亡した人に配偶者がいれば、その配偶者は必ず相続人になります。
配偶者は必ず相続人になるので、いわゆる順位0番の相続人となります。
正確に理解したい人のために、一応条文を載せておきます。
(参考)
(配偶者の相続権)
民法第890条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。
この場合において、第887条(子及びその代襲者等の相続権)又は前条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
故人の遺産形成や維持管理に一番の貢献をした人
多くの場合それは内助の功ある配偶者です。
ゆえに、内助の功に報いるという理由から、配偶者は必ず相続権をもつのです。
なお、内縁関係の人(愛人も含む)は、法定相続人に含まれません。
それ以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
第1順位・・・死亡した人の子供
これも根拠を明確にしたい方がみえますので、一応条文を載せておきます。
第一順位の子供がいれば、故人(被相続人)の親や兄弟に相続権はありません。
なお、裁判所への申立により法的に相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。
(参考)民法第887条
(子及びその代襲者等の相続権)
1.被相続人の子は、相続人となる。
2.被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は欠格事由に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3.前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は欠格事由に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
というように、条文は”ややこしい”ので図解にしてみました。
被相続人に子があれば、被相続人の兄弟や親に法定相続権はありません。
子(卑属といいます。)が第一順位といわれる理由です。
この形態が、一番スタンダードな相続パターンです。
※ちなみに緑が相続人オレンジが亡くなった人(被相続人)です。
表中の分数等は法定相続分を表しています。
子供が三人いるので、配偶者と子供三人が相続人となります。
このケースでは、配偶者の法定相続分を除いた財産の半分を、子供たちが三等分した割合が法定相続分となります。
団塊の世代は、3人程度の子息を持つ場合が多いので、これもスタンダードな形ですね。
※くどいですが、緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
表中の分数等は法定相続分を表しています。
最高裁の判決を受けて非嫡出子(正式な婚姻関係外の者との間で生まれた子)の相続分が嫡出子(正式な婚姻関係の基で生まれた子)と同等に扱われることになりました。
愛人などの内縁関係等で生まれた子(非嫡出子)と嫡出子は、被相続人からみれば”同じ子供”なのに、出生原因で相続分で差別されるのは、法の下の平等に反して憲法違反ということになったんです。
よって、この場合には、非嫡出子も法定相続人となります。
ちなみに、非嫡出子という言葉も差別的という批判が一部にあるようなので、いずれ改名されるような気がします。
子Cは既に死去している為、孫が子Cの代わりに法定相続人となります。
いわゆる”代襲相続”という仕組みです。
※緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
表中の分数等は法定相続分を表しています。
配偶者が既に死亡しているため一人っ子の子供のみが相続人となります。
中国で多い形なんでしょうか。
配偶者が既に死亡しているため2人の子供が相続人となります。
子供たちが均等に法定相続分を有することになります。
※緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
配偶者が既に死亡しているため3人の子供が相続人となります。
これも2人の場合と同様に、各人均等に相続分を有することになります。
超高齢化社会の昨今、稀にみる形です。
伊勢湾台風などの被害が大きかった地域にも見られます。
※緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
表中の分数等は法定相続分を表しています。
4人が代襲相続人ということになります。
※緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
中の分数等は法定相続分を表しています。
第2順位・・・死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
第1順位の子がいないときで、父母や祖父母等(尊属)がいるときは、死亡した人により近い世代である父母が相続人になります。
父母が無い場合には祖父母が相続人になります。(ちなみに祖父母と父母もいない場合には第二順位に該当する相続人はいないということになります。)
(参考)民法第889条
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
次に掲げる者は、第1順位の相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
子供がいない(第1順位が不在)ため、父母が相続人になります。
結婚をしない子供が増えているので、これから標準的となってくる相続の形かもしれません。
※緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
括弧内の分数等は法定相続分を表しています。
子(第1順位)がいないので、父が唯一の相続人になります。
※緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
表中の分数等は法定相続分を表しています。
子供(第1順位)がいないので、父母(第2順位)が相続人になります。
祖父が健在ですが、被相続人から近い世代の尊属が相続人となることから、この場合には父母が法定相続人となります。
※緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
括弧内の分数等は法定相続分を表しています。
子供がいない(第1順位が不在)ので、父が相続人になります。
祖父が健在ですが、被相続人から近い世代の尊属が相続人となることから、この場合には父のみが法定相続人となります。
※緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
子供(第1順位)も両親(第2順位)も不在ですが、祖父母(第2順位)が健在のため、祖父母が相続人になります。
※緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
第3順位・・・死亡した人の兄弟姉妹
第1順位の人(子などの卑属)も第2順位の人(親などの尊属)もいない場合には、その兄弟姉妹が相続人になります。
その兄弟が既に死亡しているときは、代襲相続によりその兄弟の子供が相続人となります。
なお、裁判所への申立により法的に相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。
(参考)民法第889条
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
次に掲げる者は、第1順位の相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
子供(第1順位)が不在、父母(第2順位)もいないことから、第3順位の兄弟が法定相続人になります。
※緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
表中の分数等は法定相続分を表しています。
子供(第1順位)がおらず、父母(第2順位)もいないことから、第3順位の兄弟が相続人になります。
第3順位の兄弟の内1名が既に死亡しているため、その子が代襲相続人として相続人の地位を得ます。
※緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
子供(第1順位)がおらず、父母(第2順位)もいないことから、第3順位の兄弟が相続人になります。
第3順位の兄弟の内1名が既に死亡しているため、その子が代襲相続人として相続人の地位を得ます。
くわえて、父に認知した子がいることから、その子も異母兄弟として法定相続人となります。
ただし、半血兄弟姉妹として、その相続分は両親が同じ兄弟姉妹の1/2となります。
複雑ですが、稀にある相続パターンで、分割でもめる典型形態です。
※緑が相続人オレンジ色が亡くなった人(被相続人)です。
中の分数等は法定相続分を表しています。
その他の相続パターン
誰も法定相続人がいない場合、故人の療養介護に貢献があった者や内縁関係にあった実質的な妻(事実婚者)等が、裁判所の手続を経て相続分を確保する制度もあります。
この場合の表中緑色は相続人とはいえませんが、わかりやすくするために、緑色に着色しておきました。
誰もかれもいない場合には国庫に帰属します。
いいのかわるいのかはわかりません。
最後に2点
これまで説明した法定相続人は、遺言書などが無い限りは当然に相続人となりますが、遺言書があるような場合には、自身の法定相続分をきっちり確保できない場合もあります。
逆をいえば、遺贈により法定相続人以外に財産を承継させることも可能です。
(遺留分減再請求や特別受益、寄与分等については別途のページで説明いたします。)
法定相続分とは、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分です。
つまり、相続遺産の分割は、相続人全員の協議により分割することを原則とするため、その協議の結果としてこの法定相続分を無視した遺産分割することは認められます。
強制的に法定相続分で遺産分割をせよということではありません。
法定相続人の理解にからめて、相続の順位はこちらで説明しております。
こちらで目安となる相続報酬を公開しておりますのでご覧ください。
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